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サブグループ解析
2013-02-19 Tue 19:17
PROSPERという研究の中には興味深い結果が示されています。

サブグループ解析といって全体をさらにいくつかの群に分けて解析したものですが、喫煙していない群では心筋梗塞や脳梗塞の発症率はスタチン内服群で13.7%、非内服群で16.5%と有意に内服群の発症率が低いのに対して(ただし2.8%だけ違うだけです。内服群にも13.7%の発症があり、非内服群でも83.5%の方は発症していないのは以前お話しした通りです)喫煙しているグループでは発症率はスタチン内服群で15.5%、非内服群で15.3%と差がありません。

同様に、非糖尿病群では心筋梗塞や脳梗塞の発症率はスタチン内服群で13.1%、非内服群で16.0%と有意に内服群の発症率が低いのに対して、糖尿病群では発症率はスタチン内服群で23.1%、非内服群で18.4%と逆にスタチン内服群の方が発症率は高くなっています。

この結果から言えるのは、喫煙している人や糖尿病の人はスタチンを内服するよりは糖尿病の治療や禁煙を優先させる方が重要だという事ではないでしょうか。

しかし、スタチンを売る製薬会社はこういう事は伝えませんねぇ。

サブグループ解析とNNTについてもう一つの例をあげたいと思います。ASCOT-LAAという研究では、40歳から79歳の高血圧の方で、糖尿病や喫煙などの動脈硬化の危険因子がすくなくとも他に3つ以上ある方を対象としています。リピトールと言うスタチンを1日10mg内服した(PROSPERという研究では40mgでしたので、この研究での使用量はその4分の1と経済的です)5,168人と内服していない5,137人を3.3年間比較しました。スタチンを内服しない群の心筋梗塞(軽症、重症、死亡の全てが含まれています)の発症率は3.0%だったのに対して内服していた群の発症率は1.9%で両群間に差があったという結果だったために、このスタチンを内服する事は心筋梗塞と脳梗塞の予防に有用だと結論づけられました。実数では1,000人中内服群が19人、非内服群が30人という事になります。内服群でも1,000人中970人の方が心筋梗塞になっていませんし、3.3年内服してもその差は1,000人中11人です。

それでは前述のNNT(Number Needed to Treat:患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療を行わなくてはならないのかを示す指数)という観点で考えてみましょう。2005年の時点でこのスタチンの値段は10mgで約163円です。1日10mgという事は、1日163円、1年365日で59,400円、3.3年間で約19万6千円です。これを1,000人に投与すれば1億9,600万円の薬代が製薬会社に支払われる事になります。そしてそのスタチンの投与で1,000中11人が心筋梗塞を免れるわけですから、心筋梗塞の発症を1人予防するために1,780万円が必要です。

前述のサブグループ解析という点では、この結果では全ての原因による死亡率、心臓の血管を原因とする死亡率、心不全、狭心症、不整脈、心臓の血管以外の動脈硬化(主に手足の血管の動脈硬化)、糖尿病の進行、腎臓の機能障害の進行に投与群と非投与群で差が認められていません。理由はわかりませんが女性に対しては心筋梗塞の発症に有効性が認められませんでした。そしてPROSPERという研究と同様に糖尿病の方にも効果が認められませんでした。

有効であった点は論文を読んでいない者にでも伝えられますが、有効でなかった点は論文を読んだ者にしか伝わらないものです。
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ワクチン療法とsink仮説
2013-01-05 Sat 05:49
BBB を介したAβ排出機構が注目を集める契機となったのは、Schenk らによって創出されたワクチン療法である。Aβで免疫しても、抗Aβ抗体を投与しても脳内のアミロイド蓄積が抑制された為、ワクチン療法が抗Aβ抗体の産 生を介して効果が発揮されている事が確認されたことによる。

sink仮説とは、、、
末梢血液中に存在する抗Aβ抗体がAβ蓄積を抑制するメカニズムとして、Schenk らは脳内に侵入した抗体がアミロイドに結合し、ミクログリアによる貪食を促進すると想定した。

一 方、DeMattos , Holtzman らはAβの脳から血液への排出を想定し“sink仮説”を提唱した。彼らは APP トランスジェニックマウスに抗Aβ抗体を投与すると、血中のAβレベルが定常の1000倍に上昇する事を見出し、この時、抗Aβ抗体の顕著な脳内移行が見 られなかったことから、抗Aβ抗体の作用する場所は末梢血だと考えた。それらの結果から、抗Aβ抗体が脳内のAβを“引き抜く”というメカニズムを提唱し た。

すなわち、脳と末梢血液間のフリーのAβ濃度に平衡関係を想定する場合、抗Aβ抗体がAβと結合しフリーのAβが減少すると、この平衡が血液側に傾き、その結果、脳から血液中にAβが排出され、脳内Aβが低下し、蓄積が抑制されるとするものである。

この脳内からのAβの輸送には、LDL recepter family の一つである LRP1 や P-糖タンパクなどが想定されているが、まだ、確かな事はわからない。
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アルツハイマー病のワクチン治療
2013-01-05 Sat 05:27
実際の治療法開発の現状を追いながら見てみましょう。
アメリカとイギリスで中程度のアルツハイマー病患者に対して、第1相試験が行われました。その時使われたワクチンは、Betabloc(AN1792)と呼ばれ、合成Aβ42(注1)を凝集させたものと、QS21 と呼ばれるアジュバントを含むものでした。

第1相試験は無事終了して、第2相試験の時に亜急性髄膜脳炎が実薬群に6例現れたので、試験そのものが中止されたのは、ご存知の通りです。(注2)

注1:γ-セレクターゼの変異(家族性アルツハイマー)によってAPPから切り出されるタイプのアミロイドで、凝集しやすい特徴がある。
注2:アジュバントの種類により、Th1 , Th2 のバランスが変化する。この場合はTh1 タイプが誘導されて脳炎が起こったと考えられた。


◆安全なワクチン開発
T 細胞のAβ認識部位は、C末端側にあるといわれ、N末端側のみのペプチドを用いるという方法も考えられたのですが、ヒトは雑種(MHC-Ⅱの多様性)であ り N末端に反応しないとは限らないし、epitope spreading の問題もあり、アジュバントを工夫することが最善と考えられます。

◆実際の方法
1.抗体を注射する。
抗体なら、T細胞応答を引き起こす心配は全く無いのだが、繰り返して投与する必要があり、抗イディオタイプ抗体が形成されることも考えられる。

2.Aβ42ペプチドの鼻腔内噴霧
この方法では、Th2 が主に誘導され、Th1 誘導は抑制される。しかし、アジュバントが必要であり脳炎が起こる可能性もある。

3.アデノ随伴ウイルスベクターに Aβ42 , Aβ21をコードする cDNA を組み込んで経口投与する。
腸管上皮に感染し、尚且つ、宿主細胞に組み込まれる場合もあり、長期間にわたってAβ42が産生され、これに対して腸管免疫系が応答する仕組みを利用したものである。腸管免疫系を利用するので、Th1 は抑制され Th2 が反応のメインになる。


このように、アルツハイマーのワクチン療法は実用化までもう少しです。これまでの経験からワクチン療法に痴呆を治す効果はないので、発症を抑制する、進行を抑制する治療法という位置づけになるでしょう。
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将来のアルツハイマー病の治療薬
2013-01-05 Sat 05:12
アルツハイマーは、病理学的にリン酸化タウ蛋白の凝集によって生じる神経原線維変化、βアミロイドが沈着する事による老人斑、そして、シナプス・神経突起・神経細胞体の変性脱落を特徴としている。


この辺をじっくり見ていこう。

①まず、アミロイドβ蛋白が産生される分子メカニズムが解明されつつある。
・βアミロイド前駆体蛋白(βAPP)から産生される。
・βAPPは、生体内で、非Aβ産生系路とAβ産生系路の2種類の代謝を受ける。
・非Aβ産生系路からは、α-セクレターゼとγ-セクレターゼによって APPsαとp3と呼ばれるペプチドが生じる。
・Aβ産生系路からは、β-セレクターゼとγ-セレクターゼによって、APPsβとAβが産生される。というわけで、これが重要だ。

以上の知見から、Aβの産生を制御しているβ-セレクターゼとγ-セレクターゼが、AD治療薬の創薬ターゲットとして、注目されている。
(γ-セクレターゼの構成蛋白質の一つである“プレセニリン(presenlin)”もこの辺のキーワードである。)

②次に、切り出されたAβは分解されれば、AD を発症しないワケだから、その分解を制御する蛋白質は創薬ターゲットになる。分解の主役は“ネプリライシン”と呼ばれるプロテアーゼである。




③しかし、Aβは、凝集してしまうと非常に分解されにくくなる性質がある。
Aβは、ある特定の条件下で非常に凝集し易くなる。その凝集の核となる“種(seed)”があることが、最近、わかってきた。このseed蛋白も創薬ターゲットである。


④ところで、生体は、ネプリライシンで分解されない Aβは“免疫系”を動員してこれを除去しようとする。これを治療に応用するのが、“Aβワクチン療法”である。


⑤それでも除去を免れた Aβは、組織に蓄積し始めると、タウ蛋白をリン酸化し始める。このAβがタウをリン酸化するメカニズムが治療のターゲットになりうる。


⑥そして、最後の最後の本丸。リン酸化タウが神経細胞を“死”に至らしめる機序が治療のターゲットになる。そして、その細胞死を防ぐ“ヒューマニン”という物質も発見された。

 アルツハイマー病の原因遺伝子による 脳神経細胞の死滅を防ぐ物質を、慶応大医学部の西本征央教授らが突き止めた。22日発行の米科学アカデミー紀要に掲載される。アルツハイマー病は、脳神経 の細胞が死滅し、脳が委縮、痴ほう症状が出る病気。その原因遺伝子は、いくつか見つかっているが、すべてのケースで死滅を防ぐ物質が見つかったのは初めて。治療薬開発につながる可能性があるという。

 この物質はヒューマニン(HN)と呼ばれ、24個のアミノ酸からなる小さなたんぱく質。西本教授らは、アルツハイマー病になっても脳の後頭葉はほとんど委縮しないことに着目、患者の後頭葉の遺伝子からHNを作る遺伝子を見つけた。

 研究では、HNをごく微量加えたマウスの脳神経細胞と、HNを加えていない細胞とを比較。両方の細胞でアルツハイマーの原因遺伝子を働かせたところ、H Nを加えていない細胞はすべて死滅したが、H Nを加えた細胞は100%生き残った。西本教授は「働くメカニズムは不明だが、ごく微量で効果があり、注射などによる治療につながると期待できる」という。

 また、細胞に沈着して死滅させる物質で、この病気の原因のひとつと考えられているβアミロイドを使った実験でも、HNを加えた細胞のみ生き残った。

(以下省略)
(参考文献:平成13年5月22日 読売新聞・一面)
 


以上の①~⑥までの分野を深く勉強する事が、アルツハイマー治療薬の理解に繋がると考える。
尚、上記の①~⑥の考えは、『脳内にAβが蓄積することがAD発症に大きな役割を果たすとする“アミロイド仮説”』が元になっているのだが、現時点で“アミロイド仮説”を反駁できる研究が無い事を考えても、非常に信憑性が高く、ほぼ、コンセンサスが得られていて、もう、“説”は外しても良いと考えられる。


遺伝因子としては、アポリポプロテインEのε4が、人種を越えて危険因子となっている。
ただし、これは、どういう意味があるのか、まだ、わかっていない。

・・・とは言っても、全身のコレステロールの1/4が中枢神経 (中枢神経はほとんど脂肪!)にあって、コレステロールは様々なアポリポ蛋白と結合している。そして、脳脊髄液中のアポリポ蛋白は ApoA-I , D , E , J などであり、これらは、いずれも HDL 分画に回収される。

血液脳関門を血漿アポリポ蛋白は通過できない為、脳内のリポ蛋白は脳内で産生された HDL に由来する。細胞膜の機能維持や修復、にはコレステロールは重要なのだから、アルツハイマーに何かしら、関係があるのは当然だ!
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急性 GVHD の発症機序
2013-01-04 Fri 05:58
急性 GVHD は移植片に含まれる同種のドナーT細胞がレシピエントのアロ抗原(この場合ドナーが保有しない抗原と考えて下さい。MHC-Ⅰがアロ抗原になります。)を認識して活性化し、主として皮膚、消化管、肝を障害する病態です。

急性の場合は、次の3段階で説明されます。

①移植前治療の放射線照射や化学療法で組織破壊が起き、LPS (腸管粘膜障害によるG陰性桿菌由来)と IL-1 , IL-6 , TNF-α , IFN-γが放出される。

その結果、DC やMφ上の TLR を介して、患者 APC の MHC 分子や接着分子の発現が亢進する。

IFN-γは標的臓器のケモカインレセプターの発現を亢進する。

LPS は強力なMφの刺激因子であり、非特異的な炎症反応を助長する。

②ホスト DC とドナー T細胞の相互作用により、ドナー T細胞が増殖・分化し Th1 になり、そこから Th1 サイトカインである IL-2 や IFN-γ が産生・放出される。

Il-2 は Th1 細胞の増殖を亢進し、CTL を誘導し、NK細胞を活性化し、免疫反応の中心となる。
IFN-γは、単球系細胞から TNF-αやIL-1の産生を促す。これらは、炎症性ケモカインの産生を刺激して、エフェクター細胞をケモカインレセプターの発現した臓器へリクルートする。

③ドナー由来の細胞性エフェクターとしては、CTL があり、そのエフェクター分子は Fas ligand と perforin/granzyme で、アポトーシスを誘導する。
その他、活性化マクロファージは、TNF-αと一酸化窒素 NO による直接的な組織障害。
そして、NK 細胞も組織障害に関与する。


ところで、この急性 GVHD は誘導されるプロセスと同時進行で、抑制系も発動している。
それを見ていきましょう。これを知る事は、GVHD を予防する戦略として、抑制系の活性を促すような方法の理解に繋がります。

Activation-induced cell death (AICD) とは、生体における negative feedback の一つで、強く活性化された CD4 陽性アロ応答性T細胞が Fas 依存性にアポトーシスを引き起こして、アロ応答が減弱する事である。
Th2 からは Th2サイトカインが産生され、炎症性サイトカインを抑制する。
NKT細胞は大量の IL-4 を産生を介して GVHD を抑制する。
T細胞除去HLA不適合移植では、NK細胞の抑制性受容体(MHC-Ⅰが発現していればその細胞には無反応)KIR とそのリガンドの不適合が GVHD 発症頻度を低下させるという逆のような“面白い”減少が見られるが、その理由は、KIR と MHC-Ⅰが結合出来ない為、アロ応答性のNK細胞がレシピエントDCを排除してしまう機序が考えられている。
LPS で刺激された Mφから放出される可溶性CD163はT細胞機能を抑制する。

CD4+/CD25+ 制御性T細胞 (Treg)は、アロ抗原に反応して分化したTh1細胞の増殖と炎症性サイトカインの産生を抑制する。

Mesenchymal stem cell (MSC) は骨髄中に存在し、線維芽細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞などに分化する幹細胞で、骨髄微小循環を構築する。この細胞は、機序が不明だが、GVHD に抑制的に働く。
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